カテゴリー「ストーリー」の7件の記事

連載・ソウル(魂)、旅する・7~あれから~

魂は幾度も転生してきた・・・。

そして、21世紀、転生の最終章がいよいよ始まった。

アセンションまでの魂の旅の様子を、感じたままに連載します。

PS.何の計画性も無いのでどうなるかわかりません

遠い昔を思い出した。

私はまだ2歳だった。

母は高度の病気で入院していて

父と姉と3人で暮らしていた。

ある日、私はリビングのじゅうたんにある物体を見つけた。

茶色くて丸いその物体を手でつまみあげ、何か確認するために

まず匂いをかごうと思って顔に近づけた瞬間、

二つの声が聞こえた。

「汚い、だめ」父の声だった。

そして重なるように姉の声・・・

「大事だよ。」

・・・

ある物体とは、10円玉だった。

姉は続けた。

「大事。お金は大事だよ。ありがとう」

そう言った。

その顔は微笑みで優しかった。

一方父の顔は不安そうな顔だったので

私は本能で姉に従った。

10円玉を大事そうに姉に手渡したことをずっと忘れない・・・。

・・・。

あれから

姉は家を出て行き、母は退院し、父はこの世から逝った。

でも、今ならわかるんだ。

あのときの父の思いを。

2歳だった私にとっての10円玉は

きっと雑菌を心配したに違いない。

10円玉を顔に近づけたわが子を見て

なめるんじゃないか、食べちゃうんじゃないか、

親として、心配で

とっさに、

「汚い、だめ」と言ったのではないか。

一方、姉はこの不況のなか、お金は必要、10円たりとも邪険にしてはならないという観点で

「大事」

とっさにそう口走ったのだろう。

・・・

今ならわかる。

お金は、汚くて、大事。

大事で汚い・・・。

のでしょう。

・・・

あの日、私は姉の微笑みに従ったがゆえ、

あの日の父の私を思う親心が身にしみる。

・・・。

ありがとう。

今ならわかるから・・・。

だから、話し合う場をください。

そう毎日願うことで、

私は父に夢で会い続けたんだ。

|

連載・ソウル(魂)、旅する・6~尾行~

パパはある日、ひとりで出かけた。

僕はそれに気づいてか、無意識か、だまって後を付いて行った。

少しだけ薄暗いレンガと石づくりの街で人通りが結構ある。

パパは立ち止まった。左手にケーキ屋さんがあり、

店頭で店員が「ただいま試食を行っています、中へどうぞ」と

両手でケーキの乗ったショーケースを掲げている。

チョコレートのバームクーヘンのようなケーキ。

パパは甘いものが好きだけれど、見た目、あんまり美味しそうでもないなあ。

ぼんやりしていると、パパが見えなくなった。

ヤバイ、見失った?

この街、僕知らないところだし、パパ見失ったらおうちへ帰れない。

ヤバイ、どうしよう・・・。

いや、大丈夫。パパはいつも教えてくれた。心を鎮めて、目を瞑って・・・。

Photo

サザナミ by akiko.

・・・階段が目の前に広がっていた。

階段の先は大きな大きなシャンデリアがあるレッドカーペット。

その奥には部屋が広がっている。豪華だ。

その部屋でどうやら試食のケーキを食べさせてもらえるらしい。

まるで中世のヨーロッパで王子様とお姫様がいそう。

でも、いるのは日本人らしき人、あと犬や猫もいる。

・・・

レッドカーペットの階段部分に到達するまでは

グレーのコンクリートのような階段。

狭い、人ひとり登るのがやっと。

その階段を日本人と犬や猫が列を成して登っている。

気づくと、僕のふたり前にパパがいた。

僕は必死でついていった。

途中、パパが振り返る、僕は顔を横にして目をそらした。

しばらくして恐る恐る前を見ると、パパはまた前を見て登っていた。

ほっとして僕も登る。

ようやくレッドカーペットの前の広い踊り場に出て、

ケーキ屋の店員が「みなさん、試食はこの上の部屋です。」と

言った瞬間、僕はパパと目が合った。

油断していた。怒られるのかと思いとっさに後ずさりした。

後ずさりしながら、わかった・・・。

パパの目を見て、わかった。

一瞬、スローモーションのように感じた。

パパはまわりのみんなを見ながら、

「この人たちは誰だろう」という顔をしていた。

パパは僕のこともわからない?

・・・

僕のことを見てるのに「君の事は知っている気がするけど、誰なんだ?」

という顔をしている。

僕もわからなくなってきた。

なんなのか?これは?夢?

・・・

そして、僕はさっきやっと苦労して登ったグレーのコンクリートの階段を

一気に転げ落ちていた。

振り向くと、パパはまだ僕を見ていた。

僕を見下ろして、2歩、3歩・・・近づいた・・・

僕は聞こえた。

「着いてくるんじゃない」

その顔は、威嚇しているようにも悲しそうにも見えた。

その時、初めて気がついた。

パパの服装。

いつもお仕事に行くときのスーツ姿だけど、

僕が見たことの無いスーツだった。

もうひとつだけ違った。

いつもお仕事のとき、持っていくはずの

黒くて大きなビジネスバッグを

その日のパパは持っていなかった。

|

連載・ソウル(魂)、旅する・5~我慢のワケ~

魂は幾度も転生してきた・・・。

そして、21世紀、転生の最終章がいよいよ始まった。

アセンションまでの魂の旅の様子を、感じたままに連載します。

PS.何の計画性も無いのでどうなるかわかりません。(*^-^)

僕は持ち物は少ないみたい。

パパはおうちや車、お仕事やお金、洋服や靴、趣味、本、とか

いろいろ持っているけれど

僕は何にも持っていない。

足でこぐ車や、アンパンマンのTシャツとか、

あるけど、それは全部パパやママたちが用意したものだし。

僕のもの、とあえて言うなら、公園で拾ってきた石、かな。

でもこれも地球のものだから「僕のもの」ではないかも。

そもそも、だれそれのもの、って意味がわかんない。

・・・

野良猫のちびも、いつも何にも持っていない。

いつも手ぶらで歩いている。

どこかに何か隠し持っている様子もたぶん、ない。

僕は、パパと、ママと、お姉ちゃんがいればいいから、

何か欲しい物は今のとこは、ないしな。

・・・

僕の元のおうちでも、何にも持っていなかった。みんな。

なんにも持っていないけど、欲しい時はなんでも瞬時に手に入った。

欲しい時に、なんでも瞬時に手に入るから、普段、なんにも持っていなくていいんだ。

今の僕もほぼそうだから、欲しい物は無いんだ。

でも、日に日に不安なんだ。

この三次元世界では、もしかして、欲しい時に手に入らないのかも知れないから。

パパやママやお姉ちゃんが「我慢」しているのはそういうワケか?

本当のおうちのある世界では、「我慢」は「毒」。

我慢するととたんに体が悪くなり、寝込む。

踏ん張って、我慢しないで好きなことをすると、とたんに元気になる。

何でも瞬時に手に入るから。

でも、この三次元世界では、そうじゃないみたい。

我慢しないで好きなことをするより、

好きなことを我慢しなければならないようなシステムになっているようだ。

そのせいで人は武装しなければならない。

収入を確保するために、大部分の時間と精神を費やし、

なんとか生きている。

申し訳程度に用意された、つかの間の余暇で気を取り直して

また

収入を確保するために、大部分の時間と精神を費やし、

なんとか生きている。

用意された、趣味、スポーツ、映画、などなど娯楽のおもちゃ箱の中から、

気に入ったものを なんとか選び出し、

それで遊んで気を紛らせ、

なんとか自分をなだめ、

なんとか生きている。

一日24時間、365日

そうやってすごして、「自分は幸せだ」と自分を思い込ますために武装する。

笑顔、雰囲気、服装などで・・・。

この世界では、人間は奴隷なんだよね。

ちなみにおもちゃ箱の中のものでは満足できず、

独自のおもちゃを生み出し、遊ぶと

捕まえられて、本物の奴隷になっちゃうみたい。

゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

僕は、パパたちがどうして「我慢」ばかりしているのか

もっと詳しくわかりたいと思った。

|

連載・ソウル(魂)、旅する・4~我慢~

魂は幾度も転生してきた・・・。

そして、21世紀、転生の最終章がいよいよ始まった。

アセンションまでの魂の旅の様子を、感じたままに連載します。

PS.何の計画性も無いのでどうなるかわかりません。(゚▽゚*)

パパは何を我慢しているんだろう

お姉ちゃんは何を我慢しているんだろう

ママは何を我慢しているんだろう

・・・

・・・

気づいたら僕はパパの腕の中だった。

パパは「おトイレにいくから」と言って

僕をお姉ちゃんに渡した。

救急の深夜だった。

僕は点滴をして、腕に絆創膏が張られていた。

パパが、おトイレから戻った瞬間、僕はお姉ちゃんの腕から身を乗り出し、

一目散にパパにしがみついた。

・・・

パパ、僕がわかる?

パパ、僕がわかる?

パパ、僕がわかる?

何度も何度も聞きたかった。

パパは言った。

「ボクはパパっ子だからねえ」

・・・

そうだよ!

パパ、僕のことわかる?

僕はさらにパパに強く抱きついた。

「おうち帰って寝よっか」

パパが優しく言った。

パパ、僕のことわかるんだね。

よかった。

・・・

でも、その瞬間、浮かんだんだ。

「我慢」

何?

我慢て?

僕は「我慢」っていうものが何かキーワードだと、

なんだかわからないけど

何がなにやら。

わかんないけど

メッセージがあったんだ。

|

連載・ソウル(魂)、旅する・3~予知夢~

魂は幾度も転生してきた・・・。

そして、21世紀、転生の最終章がいよいよ始まった。

アセンションまでの魂の旅の様子を、感じたままに連載します。

PS.何の計画性も無いのでどうなるかわかりません。(゚▽゚*)

僕は、病気のママより不安定なパパの方が心配だった。

お姉ちゃんはどうかわからないけれど、僕が感じるに、パパよりは心配しなくてよさそうだった。

お姉ちゃんはいつも明るくて、元気で、お友達もいっぱいいるみたい。

パパにいつも今日の楽しい出来事を話していたから。

僕は、パパが心配だった。

・・・

知らない道を僕は歩いていた。

知らない町だったけど、安全な感じはあった。

レンガ造りの街角を不意に曲がってみると、そこはケーキ屋さんだった。

店頭にいろんなケーキが飾ってあって、店員さんがこう言っていた。

「このケーキを食べたい人はここに並んでください」

「このケーキ」とは、バームクーヘンだった。

大きなバームクーヘン。

僕はあんまり食べたいってほどではなかったけど気になって立ち止まっていた。

しばらく眺めていると長蛇の列が出来上がっていた。

人間以外に、そこには、犬、鳥、鹿、猫も並んでいた。

店員さんは言っていた。

「この奥のパーティー会場でケーキを振舞います。食べたい人は並んでください。」

僕はあんまり食べたくないのに、なぜか気になってまだ、眺めていた。

次の瞬間、僕はあわてた。

パパが並んでいる・・・。

・・・

僕はおもむろにその列に並んだ。

パパの2人うしろ。

やがてその列は、「奥のパーティー会場」に誘導された。

僕はパパに気づかれないように顔を隠して進んだ。

・・・

きらびやかな金色にきらめく広く優雅な階段を列は進んでいった。

その先がパーティー会場のはずだった。

しかし、店員は言った。

「ケーキはこの先で振舞います。引き続き進んでください」

・・・

その先の階段は、狭く、暗く、急で、上りにくい階段だった。

暗かった。

2人先のパパの後姿を見ながら僕は一生懸命上った。

時に段差が高すぎて僕は難儀したが、がんばってパパについていった。

店員は言った。

「もうすぐです」

その瞬間、パパが振り返った。

僕はとっさに目をそらした。

どうしてかわからないがパパにばれてはいけないと思った。

パパは僕のことに気づいた。

体ごとこちらに向いてじっと僕を見た。

僕は急で狭く暗い階段を一気に転げ落ちた。

そして振り返ると、パパは僕を数歩、追って、

ぼーっと僕を眺めた。

その後、パパの目は「あの子は誰だろう・・・」という目になった・・・

僕は悲しかった。

僕がわからないの?

パパの目を見て僕は悲しくなった。

僕は、「パパ、ボクだよ!」と思うと同時に

後を だまってこそこそと追った罪悪感や、

なんだかわからないもやもやで

僕は一目散に上ってきた階段を下った。

・・・

長い時間がたったように思う。

・・・

僕は目が覚めた。

・・・

この間嗅いだ、ママの匂いで僕は目が覚めた。

僕は病院にいた。

すでに治療は済んで僕はパパの腕の中だった。

|

連載・ソウル(魂)、旅する。~ママがいない~

魂は幾度も転生してきた・・・。

そして、21世紀、転生の最終章がいよいよ始まった。

アセンションまでの魂の旅の様子を、感じたままに連載します。

PS.何の計画性も無いのでどうなるかわかりません。(゚▽゚*)

パパは不安定だった。

僕にやさしいのはいつもいつだって変わらなかったけれど

僕にはわかる。

ママがいない。

ママはたまにいなかったけど

最近はずっといない。

・・・

何でか、僕は知っていた。悲しくはないけれどしょうがないから。

ママは病気だから。

だからおうちじゃなく、ママの病気を治してあげられるところで暮らさないといけないみたい。

だから、僕はそれを受け入れて、それなりに過ごせるけれど

パパはどうなのかな。

パパは

僕が見る限り「不安定」だった。

・・・

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

ある日、おうちにあった「ソファ」がなくなった。

僕のくつろぐ場所だったのに。

お姉ちゃんが寝転がる、癒しのソファだったのに。

パパは何を思ったか、そのソファをごみ置き場に持っていってしまった。

・・・

がらんどう、のリビング。

ソファがなかったら僕はどこにいたらいいのかなあ。

今まで無かったことないし。

わからなかったけど、無いものはしょうがないし

まあ、うろうろしていたんだよ。

お姉ちゃんは、それについて何も意見しなかった。

ソファのない何時間かがたち、

ソファはその日のうちに元に戻った。

パパは言った。「ボクがさ、どこにいればいいかわかんないみたいでさ」

僕は数時間ぶりのなじみのソファに寝転がった。

お姉ちゃんは「そうか」と一言言っていた。

僕はうれしくていつもみたいにソファに座ったりしてたけど

パパとお姉ちゃんは複雑そうだった。

・・・

ママがいないことに、実は僕よりも二人は・・・。

・・・

゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

その日の深夜、

僕はゼンソク発作に初めて襲われた。

|

連載・ソウル(魂)、旅する。~地球直前のキオク

魂は幾度も転生してきた・・・。

そして、21世紀、転生の最終章がいよいよ始まった。

アセンションまでの魂の旅の様子を、感じたままに連載します。

PS.何の計画性も無いのでどうなるかわかりません。(゚▽゚*)

僕がこの地球に生れ落ちて二度目の夏だった。

蒸し暑く、朝早く目が覚めた僕は、この家の誰よりも早く起きた。

・・・まあ、この家の誰より僕が一番に起きるのはいつものことだけど。

この日は特段、早く起きたんだ。

だって、せみがみんみん鳴いてるし、また今日も公園でお砂遊びはいやだった。

もっと他のことがしたい、それをパパに気づかせるにはどうしたらいいだろう。

まだこの星に来て2年あまりの僕は、満足に言葉で通信できないから。

やがて、パパが起きてきて、キッチンで朝食のホットケーキを焼きだした。

パパのホットケーキはおいしいんだ。まあるくて外はかりっと中はふわっと。

熱いから ふうふうして食べるんだ。四角く一口大に切ってあるから

切り口から湯気がもくもく出ているんだよ。

僕の「本当のおうち」では、食べたいときに食べればいいんだ。

でも、「今度のおうち」ではとにかく食べろ、食べろ、と言われる。

おなか空いていなくても、食べなければならないみたい。

それが嫌なんだけど、パパの朝、作ってくれるホットケーキは大好き。

そのうち、お姉ちゃんが起きてきた。

パパがお姉ちゃんも食べなさい、と言っている。

お姉ちゃんはちょっとだけ食べて、後片付けをし始めた。

お皿を洗ったり、テーブルを拭いたり。

僕はソファーに座ってそれを見ていた。

片付けを終え、ソファーの僕の横にストン、と座ったお姉ちゃんは

窓の外に目をやり、「今日暑いね~」と言った。

お姉ちゃんはソファーに寝転がった。

僕もまねして足を投げ出した。ちょっと体制が悪くて寝なおした。

お姉ちゃんは、洗濯機をまわしながら書斎を行ったり来たりしているパパをしばらく見ていた。

僕もお姉ちゃんのまねをしてパパを見ていた。

正確にいうと、パパとお姉ちゃんを交互に眺めていた。

まあ、いつもの朝っちゃあ、朝だ。

このあと、いつもの公園じゃやだな、なんて思いは忘れていた。

・・・

お姉ちゃんは僕に振り返った。僕をじーっと見て、そうだ!っとなにかひらめいたそぶりをした。

お姉ちゃんは言った。

「ねえ、三人でプール行こう!」

・・・

パパが押入れからやっとの思いで探し出してきた僕の水泳パンツはきつかった。

もっと僕が小さいときに「今のおうち」のベランダのプールで入ったきりだったから。

僕は大きくなったんだ。

朝の光のさすリビングで、きつきつの水泳パンツを着た僕・・・。

パパは困っていたけど、僕はきつくてもいいからプールに入りたかった。

お姉ちゃんもそれを見てうーーんとうなっていたけど

「まあ、いいんじゃん?さあ行こう!」と言ってくれた。

僕はもううれしくてうれしくて仕方が無かった。

・・・

パパは運転で、お姉ちゃんが僕を抱っこしてくれて車は出発した。

え?プールはベランダじゃないの?

見慣れた道を車は走っていった。

公園に続く道だ。やっぱ公園なのか?

僕は不安になった。

今日は公園は嫌だよ。もっと違うことしたい。

でも「プール♪プール♪私も久しぶり♪」

とお姉ちゃんはうれしそうだ。

プールなのは間違いない。じゃあ、今まで僕が思っていたプールってなに?

・・・

複雑な思いでぼんやりしていると、「さあ着いた!」とパパとお姉ちゃんが言った。

・・・

むむむ?なんだここは?

何々?

ああ~パンツきつい・・・。

気がつくと目の前にプールが広がっていた・・・。

す、すげ~・・・。

視界に入りきらないような超巨大なプールが・・・。

僕はもう興奮を抑え切れなくて逆にだまってしまった。

お姉ちゃんがそんな僕を見てうふふ!っと笑った。

そんなお姉ちゃんにつられて僕は思わずにやっとした。

「息をのんでるね~声でないみたい!、でも見て!目が超キラキラだ~」と言った。

そんな~実況中継しないでよ~、は~でもそのとおり~。

「プールはじめてだもんね~」とパパ。

初めてなの?僕?プール。

そうか、「おうちのベランダのプール」と「プール」は違うのか!

夢中になって遊んだ。

プールは2個あって、一個は子供がいっぱいだった。

もうひとつは大人のプール。

パパとおねえちゃんは僕を順番に抱っこしながら

ひとりづつ、大人のプールで泳いでいた。

子供のプールと大人のプールは違った。

子供のプールは混んでいて色が薄水色で、大人のプールは空いていて濃い色だった。

子供のプールではパパと遊んだけど、お姉ちゃんは来なかった。

子供のプールは好きではないみたい。

子供のプール→大人のプール→子供のプール→大人のプール・・・

と繰り返した。

僕はどうしても大人のプールに入ってみたかった。

パパがばっしゃばっしゃと泳いでいるのをお姉ちゃんと僕は見ていた。

僕はどうしても大人のプールに入ってみたかった。

たまらず抱かれたお姉ちゃんの腕から乗り出してパパの方に身を乗り出した。

お姉ちゃんはプールのふちにしゃがみこみ「パパ泳いでるね~」と言った。

僕はさらに身を乗り出した。それにパパが気づいた。

おもむろに僕は大人のプールに入っているパパの腕の中にいた。

自らパパの腕の中に飛んでいった気がした。

子供のプールとは明らかに違う感触だった。

大人のプールは冷たかった。

しかし穏やかだった。まろやかだった。広かった。大きかった。深かった。

ほっとした。

・・・

「手,

離してみようか」

パパはプールのふちにしゃがんでいるお姉ちゃんを見上げて言った。

「うん、そうしてみたら」

2人は僕があまりに大人のプールになじみ、癒されているのが見てわかったのだろう。

パパは僕を解き放つようにそっと手を離した。

大人のプールに 

僕は 大好きなパパの手により 優しくそっと 

愛情の見守る中で自由になった。

・・・

その瞬間僕は思い出した。

地球に生れ落ちる直前のキオク。

・・・

★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

なんとも言いがたい、偉大なる物に抱かれている幸福感。

このまま眠ってしまいたいような安心感・・・。

ママの中にいたのを・・・。

・・・

・・・

気づいたら僕はきついパンツを脱いで、いつものアンパンマンの服を着ていた。

プールは楽しかった。

でもじわじわと淋しさが僕を襲っていたんだ。

そういえば、ママは?

ママがいないことに気づいた。

もう長い長い間ママがいないことに気づいた。

夕陽ですらこの身を焦がすような、蒸し暑い蒸し暑い日だった。

つづく

|